代表理事挨拶
平原 佐斗司

2025年6月に日本在宅医療連合学会の第3代の代表理事に就任いたしました平原佐斗司と申します。当学会を代表して一言ご挨拶をさせていただきます。
本学会は「日本在宅医療学会」と「日本在宅医学会」の2学会の合併により誕生しました。この両学会のルーツは、医療法の改正(1992年)により在宅医療が外来・入院に次ぐ第3の医療として法的に定められた1990年代前半まで遡ります。日本在宅医療学会は、1990年発足した「在宅癌治療研究会」を中心にいくつかの研究会が合併し、2008年に発足した病院の医師を中心とした学会でした。一方、日本在宅医学会は、1994年に佐藤智先生が若い在宅医を育て、在宅医学を確立するために創設された「在宅医療を推進する医師の会」から発展し、診療所をベースに活動する医師を中心に1999 年に設立されました。
そして、この二つの学会は、質の高い在宅医療の実践を通じて在宅で療養するすべての人の尊厳を守り、一人ひとりの生き方を支援し,本人と家族のQOLの向上をはかること、そして安心して暮らし続けられる地域づくりに貢献すること、さらには「暮らし」や「いのち」を支えるための新しい学問としての「在宅医学」を創造し、普及させていくという共通の目的を掲げて2019年に合併し、多職種とともに在宅医療を推進する学会として日本在宅医療連合学会が誕生しました。
私自身は、いわゆる在宅医療元年といわれる1992年から在宅医療に携わらせていただき、今日まで時代とともに変化する在宅医療の姿を見つめてきました。近年、従来の虚弱高齢者や末期がんの方への在宅医療のニーズが急速に拡大する一方、心不全や腎不全、非がん性呼吸器疾患、認知症や神経難病など様々な非がん疾患患者の緩和ケアや小児・トラジションの方に対する在宅医療、精神領域の在宅医療など在宅医療の対象とニーズは多様化してきました。
さらに最近では、我々はCOVID-19などの新興感染症パンデミック下の在宅急性期医療を経験し、在宅急性期医療(HaH)の在り方、さらには災害時の在宅医療の在り方、そして、自ら医療にアクセスできない人や認知症の人の初期支援といったアウトリーチといった新しい在宅医療の課題にも直面しています。
10年後の2035年には85歳以上が1000万人を超え、85歳以上高齢者の5割が要介護者、4割が認知症を合併すると推定されており、そのほとんどが独居あるいは老々世帯という社会が到来します。在宅医療はどこまで地域を支えることができるか、まさにその真価が問われる時代がやってきます。
しかし、当学会には、全国の様々な地域でこのようなチャレンジングな課題に果敢に挑んでいる在宅医や専門職がたくさんいます。希望の光だと思っています。どのような時代がきても「最先端の医学は患者さんの中に、最新の医療は地域の中にある」と信じ、「Think globally, act locally」の精神で、会員の皆様とともに歩んでいきたいと思います。
一般社団法人日本在宅医療連合学会
代表理事 平原 佐斗司